●平凡社「児童百科事典 全24巻」
2004年12月26日


 今年も残すところ数日、とにかく疲れる一年でした。

 さて、かなり前の話になりますが、「タンゲくん」(片山健 福音館書店)についての感想を読みました。なぜこのよ
うな名が付けられたか一番知りたい、とありました。絵本に登場する隻眼のタンゲくん。私は、林不忘の小説に
出てくる隻眼隻手の剣客、丹下左膳が作者の念頭にあったのではと思います。丹下左膳は何度も映画やTVドラマ
化されました。少し前も、中村獅童を丹下左膳役に起用した、「こけ猿の巻」をテレビでやっていました。こう
して時々映像化されているのですが、小説ではあまり読まれなくなったようです。若い方の間では、知らない
キャラクターとなってしまったのですね。

 この前取り上げた鞍馬天狗も、若い世代には馴染みのない話なのでしょうか。我が国に古来から伝わる天狗に
ついてはいかがでしょう。絵本に「だるまちゃんとてんぐちゃん」(福音館書店)というのがあります。加子里
子のだるまちゃんシリーズの1冊で、子どもたちに人気の本です。てんぐが話の中に出てくる訳ですが、将来図
書館司書を志す方に、もしてんぐが単なるキャラクターとしてしか理解されていないのだとすれば、何とも残念
です。

 天狗について、「児童百科事典」(全24巻 平凡社 1953年)であたってみました。一般の辞書や百科事典と
比べると分かりますが、よくまあこれ程までにと思う位、懇切丁寧に説明されています。「児童百科事典」の編
集には子どもの本に造形の深い、かの瀬田貞二氏が深く関わっていました。テング(天狗)やカッパ(河童)と
いった日本の民族分野の幾つかの項目は瀬田氏自身が執筆したと聞きます。

 「児童百科事典」は引いて調べるだけでなく、読んで楽しめるようにという方針のもとに編集されています。
各分野に亘って(児童文学という項目まであります!)、基礎的な事項がこれほどわかりやすく説明されている
のは、子どものみならず大人の我々にも魅力です。自転車や飛行機といった技術分野の項目も、素敵な分解図が
あり図面ありで、興味のある子どもなら引き込まれずにはおられません。

 刊行から約50年と年月が経ち、最先端の技術が載っていないという面はあります。しかし、そうした点は新し
い個別の本に当たればよいことです。「児童百科事典」に匹敵する百科が見あたらないので、杉の子図書館では
2セットを所蔵し、図書室と文献文庫にそれおぞれ置いてあります。

 読んで楽しめる百科といえば、同じく平凡社の「国民大百科事典」(全7巻 1965年)が挙げられます。林達
夫氏を始め、「児童百科事典」に拘わったメンバーが中心になって編集しています。煎餅について書いた時に用
いたのがこの百科です。

 新しく刊行されるものが必ずしも優れている、使いやすいという訳ではありません。10年を経過した本は廃棄
するといった乱暴な方針の図書館もあるやに訊いています。今回取り上げた二つの百科事典を所蔵している図書
館はどれほどあるでしょうか。

 最後の手紙になりました。私共の話が幾らかでもお役に立ちましたら嬉しく思います。有り難うございまし
た。